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エンタメ
2012年08月01日00:00

【連載】うしろシティ交換小説 ――21時間目『ふう何とかなった』/22時間目『B’zと4二飛成まで』



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前回まではこちら

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kaneko_21h_6299ボーカルが父ちゃんだと気づいたお客さんたちが今日いちばんの盛り上がりをみせた。
ぼくたちの失敗は、そういう演出だと思われたみたいだ。
曲がおわり、
父ちゃんが十字架はずして、と亀文字に言った。
自由になった
父ちゃんは、ステージ上の外国人のみなさんを見渡した。
「あーあ、メンバーがみんなのびちまってるな。今日はここまでだな。」
そして、ゆっくり振り返って、
ぼくを見た。
「うわっ! なんでいるの!?
いま!? と思ったし、そう言った。

「えー、いろいろありましたがなんだかんだ面白いイベントになったんじゃないでしょうか。乾杯!」
打ち上げ会場で、包帯ぐるぐるの
怪し本さんはわりと上機嫌だったし、今日の出演者もみんな楽しそうにしていて、怒られると思っていたぼくらはすっかり安心した。
メイクを半端に落としたピエロの人には良かったぞ、と言ってもらえたし、象には鼻でなでられた。
本当は
粉連続に、打ち上げの前に話があるから会場の裏手で待っている、と言われていたけど、おっかないから行かなかった。なので彼はいない。
あと、
父ちゃんもいない。
怪し本さん、父ちゃんは帰っちゃったんですか?」
父ちゃんとは、ステージを降りてから会っていなかった。
「なんだか急いでホテルに帰っちゃったよ。」
父ちゃんのホテルは、昨日ぼくらが泊まったホテルと一緒らしい。会いたくないのかな、と思った。
「お疲れさま!」
顔を上げると、
美し子さんがいた。
そして、抜けようよ、と
ぼくの手をとった。
でも、と言って
亀文字を振り返ると、片目をつぶって行け行け、という仕草をしていた。殴り林もゴリラにマウントポジションをとられながら同じ仕草をしていた。尻川は、と見ると、どうやって入ったのか、なんかよくわかんないでっかめの瓶の中で寝こけていた。

ホテルに戻ると、美し子さんがほほえんで電気を消した。
ぼくは、ん? と思って電気をつけた。
あれ? みたいな顔をした
美し子さんが、また、電気を消した。
ぼくはなんで? と思って電気をつけた。
また、電気を消そうとしたから、つけようとしたら、
ぼくの方が先にスイッチに触ってしまって電気が消えて、美し子さんが抱きついてきた。
なんで? と言おうとしたら部屋が明るくなった。
向かいのホテルから、ものすごい量のフラッシュがたかれていた。
昨日の人たちだ。
あわてて2人で部屋をでると、奥の部屋のドアの前に、でっかい十字架が立てかけられているのが見えた。
父ちゃんの部屋だ。
会いたくないのかな、とは思ったけど、会いたかったから、ドアをノックした。
返事はなかったけど、鍵はあいていた。
テーブルの上に、書き置きがあった。

『まさかお前が東京に来てるとはおもわなかった。バンドやってるともおもわなかった。もっとビッグになったらまた会おう。じゃあな。』

紙がちっちゃいのに字がでっかくて、『ビッグになったらまた会おう。じゃあな。』の部分ははみ出して机に直接書いてあった。

なんだかがっかりしていると、ふいー、と言いながらトイレから父ちゃんが出てきた。

  

 


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asuwa_22h_6240ぼくを見つけた父ちゃんが、驚いて“フレッツ!”
みたいな事を言って後ろにでんぐり返しをして派手にコケた。
慌てて父ちゃんを起こして椅子に座らせる。
1回でんぐり返っただけなのに
父ちゃんの服はビリビリに破れていて、下半身はほとんど裸だった。
 

父ちゃんはいつ家に帰って来るの?」
勇気を出して訊いた
ぼくの言葉を無視して父ちゃん
「打つか。」
と言いながら鞄から将棋盤を取り出した。

小学生の頃、夏休みになると家族でよくジェルが丘のおじいちゃんの家に行って、縁側で将棋を打った。
それ以来だ。
父ちゃんもすごく強くて、どうしても勝てなかった事を今も覚えている。
ぼく父ちゃんの誘いにのって駒を並べはじめた。
ぼくが3手目で飛車を取ると、父ちゃんが喋りだした。
「お前、Bzは聴くか?」
父ちゃんが歩を突いた。
「ううん、聴かないよ。」
ぼくが銀を取った。
Bzはいいぞ。
父ちゃんは人生の大事な事は全てBzに教えてもらった。」
父ちゃんが再び歩を突いた。
「そっか。じゃあ
父ちゃんBzみたいになれたら……家に帰ってくる?」
ぼくが角を取った。
「最初はミュージックステーションに出れたら帰ろうと思ったんだ。でも十字架を背負って茹でたてのナマコを投げつけられるパフォーマンスが人気になってな。帰るに帰れなくなった。それに、どうだ?最近
母さん元気だろ。」
父ちゃんがまた歩を突いた。
確かに最近
母ちゃんはいつもニコニコしていて幸せそうだ。
父さん母さんはお見合い結婚だったから、離れて相手を思うような経験がなくてな。だから今、ふたりとも手紙を書いたり長電話したりするのをとっても楽し……参りました。」
王将が詰んで
ぼくが勝った。父ちゃんは数回、歩を突いただけだった。  

「帰ったらみんなで玉乗りの練習だ!」
帰りの新幹線、窓際の席に座った
ぼく殴り林が通路側の席からそう言った。
真ん中の席では
尻川が幕の内弁当に顔をうずめて寝こけている。
昨日、
父ちゃんと将棋を一局指したあと、音楽のことや母ちゃんのこと、色んな話をした。
ぼくはずっと父ちゃんの右肩に彫られた「SEX OK?」というタトゥーが気になって、話の内容はあんまり覚えていない。

絵にならない窓の外の景色を眺めていたら、飛行する亀文字が鳥の群れと格闘していた。
最初は
亀文字が劣勢だったが、徐々に五分五分の闘いに持ち込んだり、鳥の一羽が亀文字サイドに寝返ったり、友情が芽生えたりした。
その無駄にドラマチックな展開に夢中になっていたらあっという間にハムの宮に着いた。

新幹線がハムの宮駅のホームに入ると、ものすごい数の人々がこちらに手を振っていた。なんだかとんでもない事になっているみたいだ。

次回以降はこちら


 

column

 


第一部クライマックスに向けて、どうなるチョコパイ!?


3月よりスタートし、今回で22話を数える「チョコパイでてきた」。
田舎町の高校生がバンドを組むところから始まった物語は、いろんな変わった名前の人が次々と出てきて、とうとう東京で大きなライブに出演するまでになりました。

ちなみに物語に差し込んでいるイメージ写真は、連載スタート前に「学校を舞台にしたストーリー」に合わせて撮影したもの。
……が、なかなか学校に行ってくれないため、教室をモチーフにしたカットのほとんどが日の目をみていません。


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▲こういうカットをたくさん撮ったんです……。

さて、バンドにとって大きな出来ごとであったライブが無事?に終わり、実はこの物語はクライマックスに向かいつつあります。

ということで、「どうなるチョコパイ!?」緊急ミーティングを決行。
ここまでのお互いの展開に関する感想(クレーム!?)やクライマックス予想などを話し合ってもらいました。

 

――そもそも学校を舞台にした物語のはずなんですが、どうして東京でライブに出てるんでしたっけ?

阿諏訪 金子が大道芸を出してきたからだよ!
金子 大道芸……? (パフォーマンスっていう)フリだけじゃなかったっけ?
阿諏訪 そう、パフォーマンスだ! パフォーマンスって……って考えたら、大道芸になっちゃった。
金子 でも今回でライブはいったん終わったからなー。
阿諏訪 地元にも帰ってきたしね。


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▲出番前の楽屋にて緊急ミーティングです。

――あと数回で「第一部 完」を予定しているんですが、最後はどうなりそうですか?

阿諏訪 最近、小説ってどうやって終わらせるんだろうって考えてて。ふだんミステリーとかばかり読んでるから、そういうのは事件を解決して終わりなんだけど。

――事件を起こせばいいんですよ。事件が起きないから話が進まないんです()

金子 ほんと阿諏訪は話を進めないからなー()。だから、2話連続で進まないのは読んでてキツイだろうなと思って、オレは話を進めてるんだもん。
阿諏訪 だって、写真もないって聞いたから、とにかく早く学校へ帰らなきゃと思って。

――回収していない“フリ”や伏線もけっこうありますよね。

金子 阿諏訪がけっこうスルーしてるんだよ。名前が出てきてるのに触れないヤツが多いから気になっちゃう。
阿諏訪 それはお互いさまでしょ!

――いえ、阿諏訪さんの方がフリをスルーすることが多いです。毎回、金子さんが張った伏線のうちひとつは落としている気がします。今回21時間目の「美し子さんとぼく、パパラッチに撮られる」とか。

阿諏訪 え、そうですか?なんだかわからないとスルーしちゃうんですよね。
金子 そうだよ、粉連続の兄ちゃんとかさー。
阿諏訪 伏線っていうより名前が出てきただけじゃん!
金子 でも、名前は太字になるでしょ。だから新たな名前が出てきたら、「こいつはいじらなきゃいけない!」ってなるかなと思って。
阿諏訪 そうか。オレ、意図がわからない人はスルーしちゃってるもんなー。自分でふった伏線はどうにかしなきゃと思って書いてたけど。
金子 だからオレはそれを解決しなきゃって思って書くから、意外とまじめな文になっちゃうんだよなー。

――もう自由に書いていいですよ()。クライマックスに向けて。

金子 じゃあ、地元(ハムの宮)には着いたけど、新幹線から降りないことにしようっと。
阿諏訪 それいいねー()。駅に着いたときの心情の描写だけで1000文字!


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▲放課後といえば掃除当番、の写真もお蔵入り!?

 

――さて、クライマックスはどうしましょうか。登場したけどほとんど触れてない人を出すとか。

金子 いや、それは阿諏訪の仕事なので。
阿諏訪 マジで!?

――ではエンディングがどうなるか、それぞれ予想してみてください。

阿諏訪 そうですねー。どんな展開になるにせよ、ぬるっとした感じで終わると思います。バシっと決まらずに()
金子 この交換小説を書き始めたときから、最終回は阿諏訪だと気づいてたので、途中は何が出てきても大丈夫だと余裕で書いてたんですよね()。だからオチに関しては阿諏訪におまかせなんですけど、ロボットである亀文字はバラバラに壊れちゃうと思います。いいヤツなロボットが出てくるときは、最後こわれちゃうイメージがあるんですよね。

――亀文字がこわれちゃってヌルっと終わると。

金子 そうですね。僕の回では壊したくないですけどね。
阿諏訪 そんな悲しい終わり方するの……?()

  

【ツイッター】当連載用公式アカウントを設けました→@web1_ushirocity
ご意見など、ぜひお寄せいただけるとうれしいです(ご本人たちもチェックします)。


●うしろシティ
左から金子学、阿諏訪泰義。それぞれ別のコンビで活動していた2人が、2009年にコンビ結成。芸人たちの間でも注目株として名前が上がる若手コント師。松竹芸能の劇場「新宿角座」を拠点に活動している。初DVD
『街のコント屋さん』が好評発売中。
・金子 公式ブログ→
http://ameblo.jp/ushirocity-kaneko/
・阿諏訪 Twitterhttp://twitter.com/ushirocityaswa




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