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エンタメ
2012年07月01日00:00

【連載】うしろシティ交換小説 ――17時間目『大人』/18時間目『大舞台と大歓声』



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前回まではこちら

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kaneko_17h_6086寝ていると思っていた尻川が急に起き上がった。戸惑った顔をしている。
尻川が、ん? ん? と言いながらしゃがんだり立ち上がったりしていると、突然殴り林が起き上がった。
「落ち着け
尻川。お前はいま、大人になった。」
よくわからなかったけど、女の人は赤い顔をしていた。

翌朝、ホテルで朝食のバイキングを食べた。すっかり回復した殴り林、ぼく、亀文字はバイキングに舞い上がって何度もおかわりをした。
よくわからないけど大人になった
尻川は、ブラックコーヒーをのみながら、お前らよく食うなァ、と微笑んでいた。
「おはよう。」
女の人が来て、今日のステージ行けたら行くね、と言って、ノートの切れ端をくれた。そこには電話番号と、名前が書いてあった。
超アイドルさんて言うんだ。」
美し子でいいわよ。」
超アイドル美し子さん。すごい名前だ。
来てくれるといいなあ、と思った。大人になった
尻川が、ブラックコーヒーを飲み干して、朝日のまぶしさに顔をしかめて言った。
「恋、か……。さあ、そろそろ行こうぜ。」
いよいよだ。

会場はものすごく大きかった。3時からイベントは始まる。その前にリハーサルだ。
リハーサルとはいえ、お客さんがいないだけで素晴らしいパフォーマンスばかりだった。
オープニングは
怪し本座長の最近あった面白い話、続いて座長の頭に載せたりんごを弓で射る猿、座長の頭に載せた肉を食べるライオン、と続いた。
「そろそろスタンバイしてくれ。」
血まみれになった座長にそう言われてぼくらは舞台袖に行った。
まだリハーサルだというのに、緊張してきた。
尻川、おなか、大丈夫?」
「フッ。」
大人になった
尻川は、堂々としていた。心強かった。
ステージでは象がティッシュで鼻をかんでいる。

リハーサルが終わって開場時間になってからも、緊張をごまかすためにぼくは楽屋でベースの練習を繰り返した。
殴り林が昨日と全く同じメイクをすませ、尻川はブラックコーヒーを飲み、そして亀文字が充電を終えて、みんなを集めた。
「いよいよだね。イベントが始まる前に、ひとつだけ言っておかないといけない事があるんだ。」
そう言ったわりに、
亀文字は言いづらそうだった。フッ、と尻川が笑ってブラックコーヒーを飲み干した。
亀文字、おまえ、アンドロイドなんじゃないか?」
尻川が口を開いたと同時にイベントが始まり、ものすごい大歓声が聞こえた。
「すごい盛り上がり! あ、ごめん、いま何て言ったの?」
亀文字がもういいや、と言った。
大歓声が一度やんで、座長の最近あった面白い話が始まった。リハーサルで聞いたよりも、だいぶ声が小さかった。

  

 

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次の瞬間、ステージでは
怪し本座長が叫び声を上げながら、ライオンから全速力で逃げていた。

その声を聞きながら裏の控え室で出番を待った。
足を組んでコーヒーを飲む
尻川
緊張からか部屋中をウィンウィンいわせて歩き回る
亀文字
頭を抱えてガタガタ震える
殴り林
僕はベースの練習で緊張を紛らわせている。

もうすぐぼくらの大舞台が始まる。
始まるということは終わりもまた来るということだ。
ぼくはなんだか始まって欲しくないような寂しいような複雑な気分だった。

「もげるもげる! マジでもげる!」
という叫び声で座長のショーは終わり、次のパフォーマンスに移った。

いよいよだ。
誰からともなく立ち上がり、スタンバイの為に部屋を出ようとしたその時、
殴り林が言った。
「聞いてくれ。」
いつになく真剣な表情の
殴り林を見た。
「もし今日の大道芸が成功したら、我々“火吹き林 一座”は本格的に東京で活動しよう。ビッグになろうぜ。」
殴り林の差し出した手をみんな無視してスタンバイに向かった。

喋るキリンのショーが終わって、照明がステージの端のピンスポットだけになった。
血まみれの座長がゴリラに支えられながら出てくる。
「さぁお次は、わが
怪し本雑技団が日本中を旅する中で探してきたパフォーマー! 遠くハムの宮から来たその名も“ファイナル・アサシン”!」

なんかみんな勝手に名前を付けすぎる。

ざわざわする観客の目線を暗闇で感じながらステージを歩いた。
ベースを持ってストラップを肩に通すと、
$口さん家の蔵の中の、臭い匂いが香った。

このチャンスをくれた殴り林には悪いけど、火を吹くパフォーマンスなんてどうでもいい。
ぼくたちは、オリジナルの曲を東京の人たちに聴いて欲しかった。

どこの誰ともわからないぼくらなんて、音楽が良くなければすぐに嫌われてしまう。
とにかく明かりがついたら丁寧に自己紹介をしよう。
そこからだ。
大事なのはイントロだと思った。
いくらリラックスしようとしても、ピックを持つ指に力が入る。

ステージの明かりがついた。
その瞬間、観客から大歓声が沸き起こった。

「……え?」
意味がわからなかった。
隣でギターを持つ
尻川も、その向こうの亀文字殴り林も、怪訝な顔でぼくを見ている。

観客の目線を追って、後ろを振り返った。

ライオンがいた。

リハーサルの時にはなかったドラムセットの向こうに、スティックを持ったライオンが座っていた。

さっきまで座長を追いかけ回していたライオンが、「ドラムが大得意」と書かれたTシャツを着てそこにいた。

あまりの意味不明さにぼくらは固まり、最初に命の危険を感じた殴り林が悲鳴を上げた。
その悲鳴をかき消すように、ライオンがドラムを力強く叩き始めた。

それはぼくらが最初に演奏する曲にバッチリあったリズムで、なによりそのドラムの音は、ものすごく格好良かった。

ぼくはライオンのドラムにあわせて、ベースを弾き始めた。

次回以降はこちら

  

 

 

column


うしろシティ第2回単独ライブ「走ってるのかと思った」終了!
写真&直筆ひとことコメントで全ネタを振り返ります。

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6/14
木~16土、うしろシティ第2回単独ライブ「走ってるのかと思った」が、盛況のうちに終了しました。

今回は単独ライブを終えて数日後のお2人に、全11本のコントと、合間のVTR、オープニング&エンディングVTRまで、すべてを振り返ってひとことずつコメントを書いていただきました。

ライブに来られた方は写真と合わせて思い出しながらご覧ください。
(来られなかった方へも雰囲気だけでも伝わればうれしいです)

  

  






●まずはオープニングからVTR(1)まで●



C1-C3

▲左から「まんが」「ギコギコ」「次のはなし」


  

うしろ振り返り1


●続いてコント4本目~VTR(3)まで●

C5-C8

▲上左から「ストリートミュージシャン」「焼肉」、下左から「美容室」「大丈夫」



うしろ振り返り2


  

●コント9本目~ラストコントまで●

C9-C11

▲左から「寿司」「ホームシック」「ストリートミュージシャンその後」



うしろ振り返り3


  

すべて新作のコントが披露されたこの単独ライブ。
実は当日まで1本少ない予定だったのだとか。
直前に通しリハーサルをしてみたところ、もう少しだけ全体を長くしたい
プラス、よりハッピーなコントで終わりたいとの思いから
ストリートミュージシャンのその後を描いたラストのコントを
初回直前に作って足したのだそう。
こうして全11本と見ごたえのある単独ライブとなりました。

この単独ライブで披露されたコントのほとんどが、
今後ライブやテレビ番組などで披露されていくはずなのでお楽しみに!
  

【ツイッター】当連載用公式アカウントを設けました→@web1_ushirocity
ご意見など、ぜひお寄せいただけるとうれしいです(ご本人たちもチェックします)。

●うしろシティ
左から金子学、阿諏訪泰義。それぞれ別のコンビで活動していた2人が、2009年にコンビ結成。芸人たちの間でも注目株として名前が上がる若手コント師。松竹芸能の劇場「新宿角座」を拠点に活動している。初DVD
『街のコント屋さん』が好評発売中。
・金子 公式ブログ→
http://ameblo.jp/ushirocity-kaneko/
・阿諏訪 Twitterhttp://twitter.com/ushirocityaswa




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