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エンタメ
2012年04月15日00:00

【連載】うしろシティ交換小説 ――7時間目『そこに尻川はいた』/8時間目『巨人軍と入学式』


 

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前回まではこちら 

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kaneko_7h_6072いよいよ初練習だ。
亀文字博士の計らいで、研究室の離れをスタジオとして借りることができた。
博士に案内された離れは研究の為に防音設備が整っていて、練習場所として最適だった。
「あの、むかし林檎のラジコン作ってくれてありがとうございました。」
「ああ、きみはあのときの変な子。」
「今日久しぶりに会うから持ってきたんですけど、これすごいですよね、壊れたことないもん。」
博士はそれは良かった、と言いながらも、チョコパイを食べた手で機械類をベタベタさわる尻川をちらちら見て警戒していた。
「じゃあ練習頑張って。研究室にいるから終わったら声をかけてくれ。ああそうだ、壁の赤いボタンは絶対さわらないでね。」
わかりました、と言って重いドアを閉めた。赤いボタンのある壁は、
尻川のいるあたりにあった。 

ごうん、ごうん。 

$口さんから借りたベースは、アンプにつなぐと思ってたより大きい音が出て驚いた。お腹がどしんとする。初心者のぼくは適当に弦を押さえて、ぼーん、と鳴らし、また別のところを押さえて、ぼーん、と鳴らすだけでどきどきしていた。
ベースは弦が太いので押さえるのに力がいる。すぐに指が痛くなった。むずかしいや、と言って顔をあげると、
亀文字が泣いていた。
「どうしたんだよ?」
「え? うわ。」
亀文字は涙に気づいていなかったみたいだ。
「なんだろう? 故障かなあ。」
「変なの。」
それからしばらくぼくらは思い思いに練習をしていた。
尻川は適当にひいてるだけだよ、と言うけどやっぱり経験者だけあって上手だったし、絶対音感をもつ亀文字のオーボエは音程を外すことなくスピッツの「けもの道」という曲のメロディーをなぞっていた。
ぼくは足を引っ張らないようにしないと、と懸命に、ぼーん、ぼーん、とやっていた。 

ごうん、ごうん。 

途中で休憩になっても、まださっきまでの音がそこら中に残っていて、それが離れを揺らしてるような、離れが空を飛んでるような、変な感じだった。
「ぼくも、バンドで練習するのって初めてだからさ、なんかどきどきするね。」
そう言いながら
尻川は持ってきていたチョコパイをくれた。
尻川の家はおやつにチョコパイがでることが多かった。
他の友達の家でもたまにチョコパイがでてくることはあったけど、だいたいはおせんべいやおまんじゅうが多かったし、ぼくの家にいたっては粕漬けを出すので、それがいつも恥ずかしかった。
たまにでてくるチョコパイは、大切に食べたし、食べ終わってから少しさみしかった。 

休憩が終わって、尻川がセッションをしようと言い出した。
アドリブでやってみるということらしかった。
まず
尻川がギターをひいて、亀文字がそれにオーボエで加わると、なんだか一気にかっこよく聞こえた。
不安だったけど、とりあえずぼくも、ぼーん、とやった。どうなんだろう? 変じゃなかったかな? どこを押さえたらどんな音がでるのかわからなかったけど、またぼーん、とやった。ぼーん、ぼーん、ぼーん。
2人がひくのをやめたので顔をあげると、2人とも泣いていた。 

ぼくは、すごいんだそうだ。 

ごうん、ごうん、しゅうー。 

結局その日はへとへとになるまでやって、博士に挨拶に行くためにぼくらは離れのドアを開けて、そして、驚いた。
   


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asuwa_8h_6096離れのドアを開けると、道場のような立派な門があった。
目を見開いて驚く、ボリュームのある白髪の老人が立っている。
そこは昼過ぎに来た
$口さん家の庭だった。 

亀文字尻川も驚いてぼくを見ている。
ぼくのベースがすごかったから、離れが飛んだんだ。
研究所から東の山の
$口さん家まで。 

ぼくらの事を宇宙人かなにかと勘違いした$口さんに事情を説明した。
「昼に自転車で来た者です。今回はベースで来ました。」
$口さんは怪訝な顔をしながらも日本刀を鞘におさめてくれた。 

これは家ではベースの練習は出来ないなと思った。家だけじゃなくて、もしぼくがビッグになって、東京ドームでベースを弾いたらどうだろう。ドームがふわふわ浮いて、どこか知らない所まで飛んでっちゃう。
それだと巨人軍の人にすごい迷惑がかかってしまう。 

そしてぼくは音楽を辞める決心をした。
僕がベースを弾くと巨人軍が困るから。 

その事をみんなに伝えようとした時、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると
亀文字博士で、汗をかいて息を切らしている。
「赤いボタン押した? ダメだよ、あれ押すと飛んじゃうから。」
どうやら僕のベースは関係なかったみたいだ。 

 

母ちゃんの作ったペスカトーレビアンコを平らげたぼくは、すぐ部屋に戻った。
そもそもペスカトーレとは“漁師”という意味で、市場で売れ残った魚をトマトソースで煮込んだのが始まりとされている。うちのペスカトーレはトマトソースを使わず、貝類やエビを殻ごと入れて深いコクを出している。トマトを使わないからビアンコ(白い)だ。 

部屋に戻るとベースを手にとった。
離れの壁にあった飛んじゃうボタンを押したのは案の定
尻川で、10分に1回くらい押していたらしい。理由は特にないそうだ。
ぼくらは
博士にこっぴどく怒られて、$口さんに謝って、それぞれの家に帰った。
音楽を辞める話は自分の中で撤回した。 

布団の上でベースを弾く。アンプを繋げて鳴らすとお腹がどしんとするのに、繋がないとペチペチと情けない音しか鳴らない。それでも楽しい。家が飛ばないから。 

カーテンレールにかかった新品の制服に目をやる。
あっという間の春休みだった。 

少し強い風が吹いて桜の花びらがごうっと舞った。
入学式の朝、高校の前にある小さな橋の上で2人と落ち合った。
みんな糊のきいた着慣れない制服が照れくさくて、それを隠すようにふざけ合いながら正門をくぐる。
「なんか
亀文字、背伸びてない?」
「うん。今日から高校生だから新しいパーツをつけたんだ。」
ぼくは昨日より15センチくらいデカくなった
亀文字を見上げ、アンドロイドじゃないんだからと思った。 

入学式が始まると、校長先生とか市議会議員の人とか、とにかくいろんなおじいさんが代わる代わる喋った。
まわりに知り合いもいないし、退屈だなと感じていた時、突然うしろから背中を小突かれた。 

次回以降はこちら

   

  

 


column

 

   

『戦国鍋TV』、いよいよ4/21から再始動! 

うしろシティがレギュラー出演している、歴史バラエティ番組『戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~』、いよいよ来週4/21土から再始動です!
ということで、お2人がMCを務めるコーナー「ミュージックトゥナイト」の収録を取材してきました。 

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「ミュージックトゥナイト」は歌のコーナーで、うしろシティは音楽番組のMC的なポジション。同じくMCの前田真里さんと一緒に、歴史上の人物をモデルにしたユニットをゲストに迎えてトークコーナーを進めていきます。 

第2シーズン最初のゲストは、新たに登場したユニット「AKR四十七」(えいけいあーるしじゅうなな)。 


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前列左から大石主税(前山剛久)、大石内蔵助(村井良大)、堀部安兵衛(間宮祥太郎)。後列左から原惣右衛門(井深克彦)、大高源吾(前田公輝)、片岡源五右衛門(福本有希)、岡野金右衛門(小谷昌太郎)の7人からなるユニットです。 

戦国鍋TVスタート時から参加しているメンバーも多く、舞台なども経てきているので気心の知れた仲。収録の合間はユニットメンバーの元でわさわさしてました。 

この日は金子さんの誕生日だったんですが、なぜか阿諏訪さんがメンバーに「(お祝いに)5000円出せや!」とすごんだのに、当の金子さんは「あとでジュース買って~」と要求がかなり小さくなっていたり() 


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そしてこの番組でのうしろシティはなぜか!? 関西弁。第1シーズン終了から半年ブランクもあり、イントネーションを思いだしながらのため、リハーサルと本番の間も必死で台本をチェックしています。

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▲ぼそぼそと2人でセリフを合わせてみたり。 

  

 

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しかし収録が進むにつれて余裕が出てきたのか、リラックスモードに。楽屋でもこんな感じででした(右の写真のみもちろんフィクションです。前田さん、ご協力ありがとうございました……)。 

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▲収録後、誕生日をお祝いしてもらって大興奮の金子さんをふたたび。 

  

第2シーズンは4/2122:30OAスタート(tvk。以降、テレ玉、チバテレ、サンテレビも続きます)。
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土の初回OAの後には、ネタバレあり!の収録レポートをアップしますのでお楽しみに。 

  

連載スピンオフ企画 うしろシティ初トークライブ「裁縫男子と料理男子」開催! 

先日こちらの記事にてお知らせしたように、当連載のスピンオフ企画「うしろシティ初トークライブ『裁縫男子と料理男子』」を開催することになりました! 

うしろシティにとって、初の単独でのトークライブ。
舞台上でふたりだけのうしろシティは、どんな話を繰り広げるのか。
当日、裁縫男子・金子さんは自作服を初披露!
料理男子・阿諏訪さんは当日のスペシャルメニューをプロデュースします! 

チケットはローソンチケットにて好評発売中!
二度とないいろいろ“初”な瞬間を、ぜひ観に来てください。 


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1週間presents 
うしろシティ初トークライブ「裁縫男子と料理男子」 

【日程】2012517日(木曜日)
【時間】開場18:30/開演19:30
【会場】阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/
     ※JR中央線阿佐ヶ谷駅南口より徒歩2分
【出演】うしろシティ(金子学/阿諏訪泰義)
【料金】前売¥1,300/当日¥1,500(共に飲食代別)
 ※前売券はローソンチケットにて発売中(Lコード:33162) 
PCからはこちら
【お問合せ】阿佐ヶ谷ロフトA03-5929-3445 

詳細はこちらの記事をチェック! 

  

【ツイッター】当連載用公式アカウントを設けました→@web1_ushirocity
ご意見など、ぜひお寄せいただけるとうれしいです(ご本人たちもチェックします)。 


●うしろシティ
左から金子学、阿諏訪泰義。それぞれ別のコンビで活動していた2人が、2009年にコンビ結成。芸人たちの間でも注目株として名前が上がる若手コント師。松竹芸能の劇場「新宿角座」を拠点に活動している。初DVD
『街のコント屋さん』が好評発売中。
・金子 公式ブログ→
http://ameblo.jp/ushirocity-kaneko/
・阿諏訪 Twitterhttp://twitter.com/ushirocityaswa 

 




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